動物にかかわる仕事 中曽根亮さん(沖縄美ら海水族館)

このサイトを見てくれているみなさんの中には、生きものが大すきな人たちもたくさんいると思います。
将来(しょうらい)ペットショップや動物園(どうぶつえん)など、生き物に関わる仕事(しごと)をしたいとかんがえている人も多いでしょう。
そこで今回は、〈海〉と〈海の生きものたち〉が大好きで、沖縄美ら海水族館ではたらいている中曽根亮(なかそね りょう)さんへのインタビューをお届けいたします。
中曽根さんは、「オキちゃん劇場」でイルカショーや訓練、海の生き物の調査研究などにも携わっている方です。

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さぁ、今回はどんなお話が聞けるでしょう。
たのしみですね。

                                          ※Gはグッジョブ担当者
G:今回は、いそがしい中、沖縄の子ども達のために時間をとってくださり、ありがとうございます。
まず、どんな仕事なのか教えていただけますか。

中曽根さん
こちらこそ、どうぞよろしくおねがいします。
現在、沖縄美ら島財団が管理運営している海洋博公園でイルカとマナティーを担当しています。仕事の内容は、動物の飼育とイルカショーなどのプログラムの運営やイルカの調教、イルカ学習会や飼育(しいく)体験など、環境学習的なイベントを行なっています。その他、クジラやイルカ、ウミガメなど海の生き物の調査研究も行なっています。

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G:そのお仕事について何年になりますか?

2001年からこの仕事をしているので、今年で16年になります。

G:〈イルカショー〉というのは子ども達もよくわかると思うのですが、〈調査研究〉というと、子ども達には少しわかりにくいかもしれません。具体的にはどんな仕事ですか?

そうですね、たとえば〈イルカの研究〉では、自然の海の中ではなく、プールの中でイルカたちが子どもを産んで育てるためのいろいろな研究を行なっています。イルカたちの血液検査もするんですよ。
また、ホエールウォッチングなどで親しまれているザトウクジラの調査も行なっています。毎年1月~4月頃は海洋博公園の前の海を泳ぐ姿を見ることができます。そのクジラたちを自然の中で観察しようという人たちもどんどん増えてきていて、ホエールウォッチングは冬の沖縄の観光の目玉の一つにもなっています。
私たちは、1991年から自然界で生活しているザトウクジラの様子を調査していて、そのザトウクジラが今どういう状況なのかを調べています。
沖縄にやってきたのはオスなのかメスなのか?
数は増えているのか減っているのか?
こどもクジラを連れているのか?
など、1頭1頭見分けて、いろいろな調査をしています。

G:わたしも以前、ホエールウォッチングに参加して、とても感動したおぼえがあるんですけど、離れたところから見て「あのクジラは去年来たオスのクジラで」という様に一頭ずつ見分けるのは、とてもむずかしそうですけど・・・

はい、〈尾びれの形やもよう〉で見分けることができるんですよ。
自分たちでとった写真だけでなく、地元の方たちも協力してくれるので、それらの写真を使って見分けているんです。

G: なるほど!

ザトウクジラの通る海の道を確認して、ホエールウォッチングをする時、
〈どれくらいまでなら近づいてよいのか〉
〈どれくらいの長さ、そこにとどまって見学してもえいきょうが少ないか〉
〈一度に集まる船の数はこれくらいなら、大きな影響はありませんよ〉
という様に、クジラの安全と船の安全などを考え、ホエールウォッチングを行なう上でのルールなどを提案したりもしています。

G: 他にもあるのでしょうか。

はい。
かんたんそうに思えて、「ウミガメの子どもが、どこを泳いでどこで生活しているのか?」という事もはっきりとわかっていないんですよ。そこで海洋博 公園で生まれたウミガメの子どもに印(しるし)をつけて、海に返し、ついせき調査しています。〈標識放流調査/ひょうしきほうりゅうちょうさ〉と呼ばれています。
実はその調査で、沖縄で離したアカウミガメが、なんとアメリカサンディエゴ沖にまで泳いでいったということもわかったんですよ。これは、調査した私たちも、とてもびっくりしました。
その他、今はもういませんが、病気で尾びれの約75%を失ったバンドウイルカ「フジ」に〈人工尾びれ〉をつけて、〈イルカの尾びれの働き〉についての研究もしていました。

G:いろいろな広がりのあるお仕事のようですね。
  ところで、そのお仕事につこうと思ったきっかけはなんですか?

はい、もともと海が大好きでした。中学生の頃も部活動の体力作りと理由をつけて、特に海でなくてよいのに、海に行って泳いでいました。海そのものも好きですけど、海に住んでいる生き物はもっと好きでしたね。
それが今の仕事を選んだ大きな理由です。
大学を卒業してからは、小笠原諸島や伊豆諸島などで、いろいろな人たちに野生のイルカを見てもらう様な仕事ができたらいいなという様なことも考えていました。
ちょうどその頃、いまの沖縄美ら海水族館の建てかえで、飼育員を募集している、と聞いて応募したのが、今の仕事につくきっかけです。

G:水族館の仕事というと、普通の仕事と変わったところも多いと思います。
そのお仕事につくということでの、周りの方達の様子はいかがでしたか?

そうですね。
高校、大学とスポーツで進学していた事もあって、周りの人たちが予想していたものと、かなり違う世界に見えたかもしれません。しかし、父からは「しろうとの発想(はっそう)でいいから、自分の思うようにやってみたらいい!」と言われたのをおぼえています。

G:今のお仕事のたのしさ、というと、まず何をあげますか?

私が水族館に入ったちょうどその年、マナティーの出産がありました。
ふるえる様に感動したのを今でも覚えています。
その時、動物を飼育することのたのしさとか、新しい命の誕生の喜びとか、いろいろなことを感じました。飼育員として仕事をしていく上で、とても大きい体験でしたね。
イルカショーでは、イルカと一緒に水中で演技する水中パフォーマンスで、イルカと息を合わせて空中に高く飛び出す〈スカイロケット〉は、何ともいえない気分です。
間近でお客さんが喜ぶ声や姿を見ることもできますし、たくさんの人たちがイルカに興味を持ってくれる事もうれしいです。

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G:今後の夢や希望をきかせていただけますか。

はい、飼育している動物を健康に長く飼育して、こどものイルカ、マナティー、ウミガメを1頭でも多く増やしていく(繁殖させる)ことが夢ですね。
そのためにも、常に「3つの‘良い’」を大切にしています。
1 良いえさ
2 良い水
3 良い環境  この3つです。
この3つがよくないと、動物を長く飼育することや、子どもが生まれることにもつながりません。動物を飼育していく上で欠かせないとても大事なことです。
海洋博公園には、1975年に開催された沖縄国際海洋博覧会当時から飼育し続けているイルカが5頭いるんですよ。
ミナミバンドウイルカという種類です。オキちゃん劇場の名前にもなっている〈オキちゃん〉は今も現役でショーを頑張っています。もちろん「初代」のオキちゃんなんですよ。
この5頭は今年で飼育42年になります。
オキちゃんの子ども〈サミ〉も、別な〈コニー〉という子イルカも、活躍しています。
いつの日か、こどもイルカだけのショーができたら楽しいでしょうね。
〈オキちゃん劇場 こどもイルカの運動会!〉みたいな。
子どもの時しか見られない、かわいらしい動作だったり、おとなイルカ顔まけの動きもみせるので、面白いイベントになると思います。
その他、海洋博公園内のウミガメ館では、世界中で8種類いるウミガメのうち5種類を飼育展示しています。ウミガメは全て、絶滅が心配されている種です。
日本では「アカウミガメ」「アオウミガメ」「タイマイ」の3種類が卵を産み(産卵)、ふ化していることが確認されています。沖縄では、その3種類すべてが産卵・ふ化しているんですよ。これをさらにすすめていきたいと思っています。
同じく、絶滅が心配されている「アメリカマナティー」の繁殖(子どが生まれ育つこと)にも成功しています。
いろいろな動物たちが暮らしやすく、繁殖が進むよう、より良い飼育環境を作っていくことを心がけていきたいですね。

G:つらい時、苦しい時、それを乗り越えるにはどうしていますか?

私が所属する動物管理チームは総勢27名のメンバーで動物を中心に仕事をしています。病気やケガの治療(ちりょう)や手当てを行うこともあります。一番つらいのは、やはり動物の「死」です。
大切に育ててはいても、生きている限り、必ずいつかはその日が来ます。その辛い「死」を、悲しいとかつらいとかいうだけで終わらせず、もっと、長く生きてもらうためには、どうしたらよかったのか、何をどう改善していったらよいのか、ということを考え、今後の飼育にいかすようにしています。
動物が死んでしまってもイルカショーの時間はやってきます。
笑顔でステージに立たなければいけません。
そんな時はショーに集中して気持ちを切りかえるようにしていました。
「動物が本当に大好きなんだ」という思いがあるから、この仕事を続けていられると思います。つらさも、乗りこえていけるのだと思います。

G:中曽根さんの様なお仕事を目指す小・中学生にアドバイスをお願いできますか。

もちろん「動物が好き」だということは、とても大切ですけど、ある特定の動物が好きだ、ということから出発して、色々な生き物に興味を持ってほしいです。わたしも小さいころから、時間があれば、動物図鑑を開いていました。
それから、水族館での仕事は熱意だけではなく、体力も必要です。
沖縄の真夏の炎天下、網をはって魚を集めたり、冷たい風がふく寒い冬でもプールにもぐってショーをしたりするわけです。
ですから、〈丈夫な体を作る〉ということは、とても大切なことです。
わたしは小学生のころ野球とソフトボール、中学ではバスケットボールと陸上競技、高校・大学ではボクシングをやってきました。その中で体力を培ってきました。体を動かすことが好きで、色々なスポーツを続けてきました。
皆さんも、丈夫な体をつくっていってください。
そういう中で、「好きなこと」を続けること、「あきらめない心」を持ってがんばっていってほしいです。

G:中曽根さんの座右の銘があれば聞かせてください

座右の銘と言いますか、大切にしている言葉があります。
興南高校時代の恩師金城眞吉監督から「チャンピオンになったからといばるのではなく、まわりの人達への感謝の気持ちを忘れるな」と日頃から教えられていたのですけど、それ時に言われたのが「みーぬいら くびうーりり」という言葉です。
「稲の穂(ほ)は実をつけるほど頭をさげるようになる。人間も地位が上がれば上がるほど頭をさげる様な、謙虚(けんきょ)な気持ちを忘れない様にしなさい」という意味です。
いつも心にとめている言葉です。

G:その他に何か伝えたいことがあれば、最後に一つお願いします

現在もそうですが、昔から私たちは、目の前のこの美しい海からたくさんの恩恵をうけてきました。沖縄と海とは切っても切り離すことができないと思っています。
沖縄の海にはジンベエザメやマンタ、クジラやイルカ、ウミガメがいて、ジュゴンなどの貴重な生き物もいます。サンゴやイソギンチャクやカラフルな熱帯魚もたくさん生きていて、小魚が群れエビやカニ、サメも生きています。
〈イノー(礁池)〉と呼ばれるサンゴ礁に囲まれた浅いおだやかな海もあれば、〈琉球海溝〉と呼ばれるとても深い海もあり、そこにはたくさんの〈深海生物〉がいます。
「沖縄の海青くてとてもきれいだ」と言われますが、沖縄の海の一番の魅力は〈生物の多様性〉つまり〈とてもたくさんの生き物たちが住んでいる〉ということだと思います。
個性ある生き物がたくさんいて、色々な生き物がかかわりあい、つながり生きています。
しかし、その生き物たちが、わたしたち人間の活動によって命を落としているということが、沖縄の海でもおこっています。
沖縄美ら海水族館で出会った巨大なジンベエザメや、オキちゃん劇場で見たイルカショー、公園内で行なっている様々なイベントを通して生き物に興味をもってもらい、生物が住む自然環境や、ゴミの捨て方や処理のしかたについて   考えるきっかけになればと思っています。
そのためにも、もっとももっとたくさんの人たちに来てもらって、色々なイベントを見てもらい、その中でたくさんの人たちに感動してもらいたいと思っています。
そういう中で、「きれいな自然環境を作っていきたい」そんな思いを持った子どもたちが増えていくと思っています。
最後まで読んでくれてありがとうございました!
目指せ未来の動物飼育員!!

 

 

G:今日は、きちょうなお話をほんとうにありがとうございました。
これを読んでくれた子ども達の中から、きっと中曽根さんの仲間になってくれる人たちも出てくることと思います。これからも活躍をたのしみにしています。

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